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もくじ
1. はじめに
皆さん、こんにちは。特定社会保険労務士の山根敦夫です。
人手不足が深刻化する中、優秀な人材の確保は中小企業にとって死活問題となっています。そんな中、女性活躍推進法に基づく「えるぼし認定」が、企業の人材戦略における重要な差別化要素として注目を集めています。
本記事では、厚生労働省が公表している最新の情報やガイドラインをもとに、中小企業の経営者・人事担当者の皆様に向けて、えるぼし認定制度の概要から具体的な取得方法、そして認定取得によるメリットまでを詳しく解説します。特に、常時雇用する労働者数が100人以下の企業にとっては努力義務とされている部分も多いですが、だからこそ早期に取り組むことで競合他社との差別化を図ることができるのです。
2. 女性活躍推進法とえるぼし認定制度の全体像
2-1. 認定制度創設の背景と意義
女性活躍推進法は平成28年4月に全面施行され、当初は時限的な法律でしたが、法改正により恒久的な施策として位置づけられ、女性の職業生活における活躍を継続的に推進することを目的としています。日本の雇用者に占める女性の割合は4割を超えているにもかかわらず、その半数以上が非正社員であり、管理職以上に登用されている女性の割合は約1割程度と、先進諸国と比較しても極めて低い水準にとどまっています。
この状況を改善するため、国は企業の女性活躍推進の取組を「見える化」し、優良な企業を認定することで、社会全体の女性活躍を加速させようとしています。えるぼし認定は、まさにその中核となる制度であり、女性の活躍推進に関する取組の実施状況が優良な企業を厚生労働大臣が認定するものです。
認定制度の意義は単に女性の地位向上だけではありません。少子高齢化により生産年齢人口が急速に減少する中、企業が持続的に成長するためには、女性を含む多様な人材の能力を最大限に活かすことが不可欠です。えるぼし認定は、そうした企業の取組を社会的に評価し、優秀な人材が集まる好循環を生み出すための仕組みなのです。
2-2. えるぼし認定とプラチナえるぼし認定の違い
「えるぼし認定」には、取組の実施状況に応じて3つの段階があります。1つ星は5つの評価基準のうち1つまたは2つの基準を満たす企業、2つ星は3つまたは4つの基準を満たす企業、3つ星は全ての基準を満たす企業に与えられます。基準を満たさない項目については、関連する取組を実施し、2年以上連続して実績が改善していることが求められます。
一方、「プラチナえるぼし認定」は、えるぼし認定を受けた企業の中でも特に優良な企業に与えられる最高位の認定です。プラチナえるぼし認定を受けるためには、えるぼし認定の全ての基準を満たすことに加え、策定した行動計画の目標を達成していること、男女雇用機会均等推進者と職業家庭両立推進者を選任していること、8項目以上の情報を公表していることなど、より厳しい基準をクリアする必要があります。
プラチナえるぼし認定の大きな特徴は、認定を受けると行動計画の策定・届出義務が免除されることです。これは、既に高いレベルで女性活躍推進に取り組んでいる企業に対する行政手続きの簡素化という側面もあり、企業にとっては事務負担の軽減につながります。

(出典:厚生労働省ホームページ)
3. 中小企業が認定取得を目指すべき理由
3-1. 人材確保における競争優位性
中小企業にとって最大のメリットは、優秀な人材の確保において大きなアドバンテージを得られることです。特に新卒採用市場において、学生の企業選択の重要な判断材料の一つが「女性が活躍できる職場かどうか」となっています。近年の各種調査によると、就職活動中の学生の多くが企業選びの際に「女性が活躍できる環境かどうか」を重視しているという結果が出ています。えるぼし認定は、そうした学生に対する明確なメッセージとなります。
えるぼし認定マークは、ハローワークの求人票や自社の採用ホームページ、会社案内パンフレットなどに掲載することができます。このマークは、国が認めた「女性が活躍しやすい職場」であることの証明となり、求職者に対して強力なアピールポイントとなります。実際に認定を取得した企業からは、「応募者数が前年比で3割増加した」「内定辞退率が大幅に減少した」といった声が寄せられています。
また、中途採用市場においても、育児でキャリアを中断した優秀な女性人材を獲得する上で、えるぼし認定は大きな訴求力を持ちます。仕事と家庭の両立支援に積極的な企業であることを客観的に示すことで、即戦力となる経験豊富な人材の採用につながるのです。
3-2. 公共調達や融資での優遇措置
えるぼし認定企業は、国や独立行政法人等が実施する公共調達において加点評価を受けることができます。総合評価落札方式や企画競争による調達では、ワーク・ライフ・バランス等推進企業として加点評価を受けられるため、競争上有利になる場合があります。加点の幅は各府省や自治体、調達案件によって異なりますが、企業の取り組みを客観的に示す強力な武器となります。
さらに、日本政策金融公庫の「働き方改革推進支援資金」を通常より低金利で利用することも可能です。設備投資や運転資金の調達において、金利優遇を受けられることは、中小企業にとって大きな経済的メリットとなります。地方自治体によっては、独自の補助金や優遇制度を設けているケースもあり、認定取得による経済的なメリットは決して小さくありません。
3-3. 企業ブランド価値の向上
えるぼし認定は、企業の社会的責任(CSR)やSDGsへの取組を対外的にアピールする上でも有効です。特に、ESG投資が注目される中、女性活躍推進は企業評価の重要な要素となっています。認定マークを名刺や企業ホームページ、商品パッケージなどに表示することで、取引先や顧客に対して先進的な企業であることをアピールできます。
また、従業員のモチベーション向上にも寄与します。自社が国から認定を受けた優良企業であることは、従業員の誇りとなり、帰属意識の向上につながります。これは離職率の低下や生産性の向上といった形で、企業業績にもプラスの影響をもたらすことが期待できます。
4. 認定取得への具体的なステップ
4-1. 現状把握と課題分析の進め方
認定取得の第一歩は、自社の女性活躍に関する現状を正確に把握することです。厚生労働省のガイドラインでは、必須の把握項目として「採用した労働者に占める女性労働者の割合」「男女の平均継続勤務年数の差異」「労働時間の状況」「管理職に占める女性労働者の割合」の4項目が定められています。
これらの数値を算出する際は、雇用管理区分ごとに把握することが重要です。例えば、総合職と一般職で状況が大きく異なる場合、それぞれの課題に応じた対策を講じる必要があります。また、常時雇用する労働者が101人以上の企業では「男女の賃金の差異」の情報公表が義務付けられています。100人以下の企業にはこの義務はありませんが、自主的に把握・分析することで、より実効性のある待遇改善や課題解決につなげることができます。
課題分析では、数値データだけでなく、従業員へのアンケートや面談を通じて定性的な情報も収集することが効果的です。例えば、女性管理職が少ない原因が「長時間労働による両立困難」なのか「ロールモデルの不在」なのかによって、取るべき対策は異なってきます。
4-2. 行動計画策定のポイント
行動計画の策定では、計画期間を2年から5年の間で設定し、数値目標と取組内容、実施時期を明確に定める必要があります。301人以上の企業では「女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供」と「職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備」の両面から目標設定が求められますが、中小企業では最も重要な課題から優先的に取り組むことができます。
数値目標の設定では、現実的かつ意欲的な目標設定が重要です。例えば、現在女性管理職がゼロの企業が「3年後に30%」という目標を掲げても実現可能性は低いでしょう。むしろ「3年後に2名以上」といった具体的で達成可能な目標を設定し、段階的にレベルアップしていくアプローチが効果的です。
取組内容については、制度整備だけでなく、職場風土の改革も重要です。例えば、育児休業制度は整備されているものの利用実績がない場合、管理職の意識改革研修や、男性の育児参加促進キャンペーンなど、制度を活用しやすい環境づくりが必要となります。
4-3. 5つの評価基準と達成のコツ
えるぼし認定の5つの評価基準について、中小企業が達成しやすい順に取り組むことをお勧めします。まず「労働時間等の働き方」は、全従業員の時間外労働を月45時間未満に抑えることが基準となっており、働き方改革の一環として取り組みやすい項目です。業務の効率化やIT化により、比較的短期間で改善が可能です。
次に取り組みやすいのが「多様なキャリアコース」です。非正社員から正社員への転換、女性の中途採用、再雇用などの実績があれば基準を満たすことができます。中小企業の柔軟性を活かし、パートタイマーの正社員登用制度を整備することで、優秀な人材の定着にもつながります。
「継続就業」については、男女の平均継続勤務年数の差を縮小することが求められます。これは一朝一夕には改善できませんが、育児・介護との両立支援制度の充実や、テレワークの導入など、継続就業しやすい環境整備から始めることが大切です。
5. 認定取得後の義務と活用方法
5-1. 情報公表の実務
えるぼし認定を取得した企業は、認定基準に係る実績を毎年少なくとも1回、「女性の活躍推進企業データベース」で公表する義務があります。このデータベースは厚生労働省が運営する公的なサイトで、求職者が企業情報を比較検討する際の重要な情報源となっています。
公表する情報は、認定時に満たした基準項目の最新実績です。例えば、3つ星認定を受けた企業は5つ全ての項目について、2つ星認定の企業は満たした項目と満たさなかった項目の改善取組状況を公表します。データの更新を怠ると、最悪の場合認定取消となる可能性もあるため、年度ごとの更新スケジュールを社内で明確にしておくことが重要です。
情報公表は単なる義務ではなく、自社の取組をPRする絶好の機会でもあります。数値データだけでなく、具体的な取組事例や従業員の声なども併せて公表することで、より魅力的な企業情報として発信することができます。
5-2. 認定マークの効果的な活用
えるぼし認定マークは、商品、サービス、広告、名刺、封筒、ホームページ、求人票など、幅広い用途で使用することができます。特に効果的な活用方法として、採用活動での積極的な露出が挙げられます。新卒採用サイトのトップページや会社説明会の資料に大きく掲載することで、学生への訴求力を高めることができます。
また、BtoB企業においては、提案書や見積書にマークを記載することで、取引先に対して自社の先進性をアピールできます。最近では、サプライチェーン全体でのSDGs対応が求められる中、取引先選定の際の評価項目として女性活躍推進への取組を重視する企業も増えています。
社内向けには、社員証や社内報、オフィスの目立つ場所にマークを掲示することで、従業員の意識向上を図ることができます。認定取得を全社的な成果として共有し、さらなる取組への動機づけとすることが、継続的な女性活躍推進につながります。
6. まとめ
女性活躍推進法に基づくえるぼし認定は、中小企業にとって人材確保や企業価値向上の強力なツールとなります。認定取得は決して大企業だけのものではなく、むしろ機動力のある中小企業だからこそ、迅速に取組を進めて差別化を図ることができるのです。
認定取得への道のりは、現状把握から始まり、課題分析、行動計画策定、取組実施、情報公表という一連のプロセスを経る必要がありますが、これらは全て自社の組織力強化につながる取組です。特に人手不足が深刻化する中、女性を含む多様な人材が活躍できる職場づくりは、企業の持続的成長に不可欠な経営課題といえるでしょう。
まずは自社の現状把握から始めてみてはいかがでしょうか。厚生労働省のホームページには詳細なマニュアルや記入例が掲載されており、都道府県労働局では個別相談にも応じています。女性活躍推進の取組を通じて、より強い組織づくりを実現していきましょう。
社会保険労務士として、多くの中小企業の皆様が女性活躍推進を通じて持続的な成長を実現されることを願っております。認定取得に向けた具体的な取り組みについてご不明な点がございましたら、お気軽にご相談ください。
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