効果的なハローワーク求人票の作成方法~応募者を引き寄せる7つのポイントと法令遵守のルール~

 この記事の内容をAI「NotebookLM」が音声で解説しています。

1. はじめに

皆さん、こんにちは。特定社会保険労務士の山根敦夫です。

人材不足が深刻化する中、多くの中小企業が採用活動に苦戦しています。求人を出してもなかなか応募が集まらない、応募があっても自社が求める人材とミスマッチが起きてしまうといった悩みをお持ちの経営者や人事担当者の方も多いのではないでしょうか。

ハローワークは無料で利用できる公的な求人サービスとして、今なお多くの求職者に活用されています。厚生労働省の調査によれば、ハローワークインターネットサービスには一日あたり約236万件のアクセスがあり、年間約450万件もの新規求職申込が寄せられています。さらに、求職者の年代によっては半数以上がスマートフォンやタブレットから求人情報を閲覧しており、いつでもどこでも求人情報にアクセスできる環境が整っています。

しかし、こうした多くの求職者の目に触れる機会があるにもかかわらず、求人票の作成方法が適切でなければ、せっかくのチャンスを逃してしまうことになります。本記事では、ハローワーク求人票を効果的に作成するための具体的な方法と、法令遵守のために押さえておくべき重要なルールについて解説いたします。

2. ハローワーク求人票で最も重視される項目とは

2-1. 求職者が注目する「仕事の内容」

ハローワークを利用する求職者が求人票で最も重視している項目は何だと思われますか。調査結果によれば、実に41.1%の求職者が「仕事の内容」を最重視しており、これは他のどの項目よりも圧倒的に高い数値となっています。次いで「職種」が24.9%、賃金が9.9%と続きます。

この結果が示すのは、求職者は単に職種名や給与額だけでなく、自分が日々どのような業務に携わるのか、どのような環境で働くのかを具体的にイメージしたいと考えているということです。特に転職を考えている求職者にとっては、前職での経験をどう活かせるのか、未経験からでも挑戦できる内容なのかといった点が重要な判断材料となります。

2-2. 求人票主要7項目の重要性

ハローワーク求人票には数多くの記載項目がありますが、特に重要なのが次の7項目です。

 ① 職種(最大28文字)
 ② 仕事内容(最大360文字)
 ③ 就業時間に関する特記事項(最大120文字)
 ④ 休日等その他の場合(最大60文字)
 ➄ 事業内容(最大90文字)
 ⑥ 会社の特長(最大90文字)
 ⑦ 求人に関する特記事項(最大120文字ですが、オンラインの求人者マイページではより多く   記載できる場合があります)

これらの項目を効果的に活用することで、自社の魅力を十分に伝え、求める人材からの応募を促すことができます。特に「求人に関する特記事項」は多くの情報を記載できるスペースが確保されており、自社の強みや働きやすさ、教育体制などを詳しく説明できる貴重な機会となります。

3. 法令遵守のための5つの重要ルール

3-1. 性別を制限する表記の禁止と例外

募集や採用において性別を理由とする差別は、男女雇用機会均等法により原則として禁止されています。したがって、求人票に「営業マン募集」「カメラマン募集」といった特定の性別を想起させる表現を使用することはできません。これらは「営業スタッフ」「営業担当者」「撮影スタッフ」といった性別を問わない表現に改める必要があります。

ただし、業務の正常な遂行上、一方の性が適していると認められている仕事については例外が認められています。例えば、女性更衣室の清掃員や同性介助による介護員、女優や俳優、モデルといった芸術分野で特定の性別の必要性がある場合、あるいは巫女など宗教上の必要性から特定の性別が求められる場合などです。

また、女性労働者の割合が4割を下回っている場合には、男女の格差を改善することを目的として、事業主が女性のみを対象とする、または女性を有利に取り扱う措置、いわゆるポジティブアクションを講じることが均等法違反とはなりません。ただし、この場合でも法の趣旨をベースに会社や職場の現状・実態を表す情報として紹介することが重要です。

3-2. 年齢制限の原則禁止と6つの例外事由

労働者の募集および採用においては、原則として年齢を不問としなければなりません。したがって「35歳以上は経験必須」といった年齢を理由に採用可否を判断する表記は認められません。ただし、雇用対策法により定められた6つの例外事由に該当する場合には、年齢制限を設けることが可能です。

例外事由の一つ目は、定年年齢を上限として、当該年齢未満の労働者を期間の定めのない労働契約の対象とする場合です。例えば定年が60歳の企業が「60歳未満の方を募集」とすることは可能ですが、定年が65歳である場合に、上限を60歳未満に設定することはできません 。

二つ目は、労働基準法等の規定により年齢制限が設けられている場合です。18歳未満では従事できない主な業務例として、深夜帯のコンビニエンスストアやファミリーレストラン等のアルバイト業務、パチンコ店など風俗営業に関連する業務、危険有害業務、警備員業務、福祉上有害な業務(酒席に侍する業務など)があります 。

三つ目は、長期勤続によるキャリア形成を図る観点から若年者等を期間の定めのない労働契約の対象とする場合です。この場合、職業経験不問であること、新卒と同等の処遇であること、期間の定めのない労働契約が対象であること、学歴や免許の指定は可能であるといった適用条件を満たす必要があります。原則は35歳未満ですが、例えば定年ありで熟練に時間を要する業務であれば、おおむね45歳未満まで可能となります。

3-3. 国籍や居住地を制限する表記の禁止

国籍、出身地、居住地、通勤時間などは特定の人物の差別や優遇となるため、これらを理由として求人票に記載してはなりません。応募の段階で中立となる表現に言い換える必要があります。

例えば「国籍は問いません」という表記は、逆に国籍を意識させる表現となるため不適切です。「現在、海外3ヶ国から来日したエンジニアも活躍しています。日本語でコミュニケーションがとれる方歓迎」といった、業務の実態を説明する形で表現することが望ましいでしょう。また「中国人歓迎」ではなく「中国語による接客・対応が可能な方歓迎。ビジネスレベルの中国語力をお持ちの方歓迎」といった具体的な能力要件として記載します。

居住地についても「地元が◯◯県の方歓迎」ではなく「Uターン歓迎」とするなど、制限ではなく歓迎のメッセージとして伝えることが重要です。

3-4. 身体的条件を制限する表記の適切な表現方法

身体的な条件や性格面は、計測不能で主観によって左右される不確実なものであるため「歓迎・優遇」は差別表現となる可能性があります。業務に必要な行動や能力として表記することが求められます。

例えば「健康な方」という抽象的な表現ではなく「日々の体調を自己管理出来る方」といった具体的な能力として表現します。「体力に自信のある方」は「30キロ程度の荷物の上げ下ろしがあります。学生時代に体育系運動部で頑張ってきた先輩が多く社内でスポーツクラブも立ち上げました」といった業務の実態と職場の雰囲気を伝える形にします。

「茶髪不可」という表記も不適切です。「接客業務のため、清潔感のある髪色(黒色を含む)で勤務をお願いしています」といった業務上の理由を明確にした表現に改める必要があります。

3-5. 賃金に関する正確な記載の重要性

最低賃金は使用者が労働者に対して支払わなければならない「最低額」であり、これを下回る金額での募集・採用はできません。各都道府県で定められた最低賃金額以上を支払うことが必須であり、臨時・外国人労働者・パート・アルバイトも適用対象となります。

求人票には基本給と固定残業代を分けて表記する必要があります。固定残業代に相当する時間を超える時間分は追加支給することを明確にし、定額で支払われる手当(職務手当等)に固定残業代が含まれる場合には、両者を分けて表記しなければなりません。

また、月額だけでなく時間外労働の割増賃金(時間給)と固定残業時間も明示する必要があります。例えば「時間外手当は、時間外労働の有無に関わらず△△時間分の固定残業代として支給し、△△時間を超える時間外労働分は追加支給します」といった形で記載します。

4. 効果的な求人票作成の5ステップ

4-1. ステップ1:欲しい人物像の明確化

効果的な求人票を作成するための第一歩は、自社が採用したい「欲しい人物像」を明確にすることです。年齢層、経験の有無、価値観、働く目的などを具体的に考えてみましょう。求職者が「自分のこと」だと思えるような情報設計にすることが重要です。

例えば、機械加工・マシンオペレータを募集する場合、「32歳男性、独身、〇〇県〇〇市出身で、〇〇市に一人暮らし。モノづくりに興味があり、県立高校を卒業後、〇〇大学へ進学、従業員数200名の製造業の会社で製造部の班長として働いている。趣味は1年前に始めたバイクで、自分でメンテナンスやカスタムを楽しんでいる」といった具体的なイメージを持つことで、求人票の内容が格段に具体的になります。

4-2. ステップ2:仕事内容を5W2Hで整理する

仕事内容を記載する際には、5W2H(What、Who、When、Where、Why、How、How much)の観点から具体化することが効果的です。何を(業務内容・商材)、誰が/誰に(顧客・ターゲット)、いつ(勤務日・勤務時間)、どこで(勤務地・部署・営業フィールド)、なぜ(業務の目的・理念など)、どのように(仕事のやり方、手法など)、どれくらい(1日の具体的な業務量など)という視点で整理します。

実際の業務の流れや働き方がイメージできるように記載することで、求職者の不安を軽減し、応募後のミスマッチを防ぐことができます。単なる業務の羅列ではなく、1日の流れや仕事の特徴も含めて記載することが望ましいでしょう。

4-3. ステップ3:自社の魅力を3点程度に整理する

応募の決め手になる「働く魅力」を具体的に伝えることが重要です。自社の魅力を3点程度に整理し、数値・制度・実績・エピソードなどで裏付けることで説得力が増します。

例えば、安定性を魅力とする場合は「離職率10%未満」「黒字経営〇年」といった数値で示し、働きやすさを魅力とする場合は「有給休暇取得率76%(2024年度実績)」「育児短縮勤務制度あり」といった具体的な制度を記載します。成長環境を魅力とする場合は「資格取得支援制度あり」「年1回の評価面談にて昇進昇格の機会あり」などを明記することで、求職者に安心感を与えることができます。

4-4. ステップ4:会社の価値を伝える2つの紹介欄の活用

求人票には「事業内容」と「会社の特長」という2つの紹介欄があります。この2つを効果的に使い分けることが重要です。

事業内容欄では、単なる業種紹介ではなく、地域性・事業の個性・主力商品・地域との関係性など、独自性を盛り込んで紹介することが望ましいでしょう。固有名詞や数字を使用することで、自社ならではの「らしさ」を具体的かつ客観的に伝えることができます。他社では使い回せない内容を記載することがポイントです。

会社の特長欄では、「ここで働くとどんないいことがあるか」という視点で、数字や制度を使って「働く意味・メリット」を教えることが重要です。ホームページやパンフレットにある「経営理念」や「お客様への想い」だけでは不十分で、求職者が知りたいのは「自分がここで働くメリット」です。これを数字や制度で伝えることで「安心感」を与えられます。

4-5. ステップ5:職種名を工夫してアピール力を高める

求人票の印象は「タイトル」と「最初の90文字」で決まると言っても過言ではありません。職種名は本のタイトルや商品名のように、ターゲットに刺さる表現で再考する価値があります。

職種名(最大28文字)と仕事内容の冒頭90文字を、ターゲットに刺さる表現で記載することで、読んだ瞬間に「この仕事、自分に向いてそう」と思わせることができます。記載内容に一貫性があるか、矛盾がないかを最終確認し、トーンや文体を統一して、伝わりやすい求人票に仕上げることが大切です。

5. ハローワークシステムの活用方法

5-1. 画像情報の活用で職場のリアルを伝える

ハローワークインターネットサービスでは、事業所単位で最大10枚まで画像を登録・公開可能です。求人票の「事業所情報」欄に画像が表示され、求職者が閲覧できます。掲載した画像は、すべての求人票に共通して表示される仕組みとなっています。

画像で何を伝えるか、効果的な写真の種類として、職場の外観で清潔感・立地・第一印象を、職場内の様子で環境・設備・整理整頓状況を、業務中のスタッフで仕事内容の具体化・雰囲気を、社員の表情で人間関係・社風の安心感を、教育風景で未経験者への安心材料を、制服・装備品で働くイメージを補完し、休憩室・共用設備で働きやすさの証明を、イベント・交流で職場のあたたかさを、多様な人材で男女・年齢層の幅広さを、認証・地域活動で信頼・社会的意義の訴求をそれぞれ伝えることができます。

5-2. オンライン応募機能による応募のハードル軽減

ハローワークでは、求職者がマイページを通じてハローワークからオンラインで紹介を受けることができる「オンライン紹介」の仕組みがあります。これにより、求職者は自社の求人に応募を希望すればマイページ上で応募でき、職業紹介の成立となります。

さらに、企業が「オンライン自主応募」を受け付ける設定にすれば、求職者はハローワークを介さずに直接応募できます 。企業は応募者情報をマイページで確認し、面接日時の調整や選考結果の連絡を行うことで、応募から採用までのプロセスが効率化され、応募者層が広がる可能性があります。特に若年層・在職者にとっては、応募のハードルが下がり、派遣・請負求人も利用可能となるメリットがあります。

6. まとめ

ハローワーク求人票は、無料で多くの求職者にリーチできる非常に有効な採用ツールです。しかし、その効果を最大限に引き出すためには、法令を遵守した適切な記載と、求職者の心に響く魅力的な内容の両立が不可欠です。

性別・年齢・国籍・身体的条件・賃金に関する5つの重要ルールを正しく理解し、遵守することで、法的リスクを回避しながら公正な採用活動を行うことができます。同時に、求職者が最も重視する「仕事の内容」を5W2Hで具体的に記載し、自社の魅力を数値や制度で裏付けながら伝えることで、求める人材からの応募を促すことが可能となります。

また、ハローワークシステムの画像情報機能やオンライン応募機能を積極的に活用することで、求職者に対してより多くの情報を提供し、応募のハードルを下げることができます。求人票は単なる募集要項ではなく、自社の魅力を伝える重要な広報ツールであるという認識を持つことが大切です。

人材不足が深刻化する中、効果的な求人票作成は企業の競争力を左右する重要な要素となっています。本記事でご紹介したポイントを参考に、ぜひ自社の求人票を見直してみてください。適切な人材の採用は、企業の持続的な成長の基盤となります。

求人票作成にお困りの際や、より詳しいアドバイスが必要な場合は、社会保険労務士等の専門家にご相談されることをお勧めいたします。私たちも皆様の採用活動を全力でサポートさせていただきます。


(参考情報)