1. はじめに
皆さん、こんにちは。特定社会保険労務士の山根敦夫です。
このたび厚生労働省から、令和7年度の予算概算要求が公表されました。本日は、来年度(令和7年度)の「雇用・労働分野の助成金」改正予定についてご説明させていただきます。
なお、ここでご紹介する内容は、あくまでも令和7年度予算の概算要求段階のものです。今後の予算編成過程で変更される可能性が十分にありますので、ご留意ください。
2. 賃上げ支援の強化
令和7年度の助成金改正の最大の特徴は、企業の賃上げ支援の強化です。具体的に、以下の改正が予定されています。
【業務改善助成金の見直し】
事業場内最低賃金の引上げに取り組む中小企業を支援する業務改善助成金について、地域別最低賃金の水準に応じた見直しが行われる予定です。
・最低賃金1,000円未満の地域:助成率4/5
・最低賃金1,000円以上の地域:助成率3/4
また、支給上限額も引上げ人数と引上げ額に応じて30万円から最大600万円となる予定です。地域間格差への配慮と、より効果的な支援を目指した改正といえます。
【キャリアアップ助成金の拡充】
非正規雇用労働者の処遇改善を支援するキャリアアップ助成金では、特に賃金規定等改定コースが大幅に拡充される予定です。
<主な改正内容>
1. 賃金規定等改定コース ※( )内は大企業の場合
・賃上げ率に応じた4段階の助成設定
① 3%以上4%未満:4万円(2.6万円)
② 4%以上5%未満:5万円(3.3万円)
③ 5%以上6%未満:6.5万円(4.3万円)
④ 6%以上:7万円(4.6万円)
・新たな加算措置
昇給制度を新たに設けた場合:20万円(15万円)
2. 正社員化コース
・有期→正規:80万円(60万円)
・無期→正規:40万円(30万円)
※以下の重点対象者の場合の支給額(2期分の合計額)。それ以外の者は1期分のみ。
①雇入れから3年以上の有期雇用労働者
②雇入れから3年未満の有期雇用労働者であって、過去から不安定雇用が継続している者
③人開金の対象訓練を受けた者、派遣労働者、母子家庭の母等
特に注目すべきは、賃上げ率の区分が細分化され、より高率な賃上げを実施する企業への支援が手厚くなることです。
3. 人材確保・育成支援の充実
【人材確保等支援助成金の改正】
人材不足が深刻な業界向けの支援として、人材確保等支援助成金の雇用管理制度助成コースが再開される予定です。
・1制度導入につき20万円または40万円支給
・上限額80万円
・賃上げ要件(5%)達成で25%の上乗せ支給
賃金規程や人事評価制度の導入による職場定着支援と、賃上げ支援を組み合わせた内容となっています。
【人材開発支援助成金の拡充】
従業員の能力開発を支援する人材開発支援助成金では、以下の改正が予定されています。
・非正規雇用労働者向け訓練の助成率引上げ(60%→70%)
・非正規の正社員化を目指して実施する有期実習型訓練の助成率引上げ(正社員化要件 75%)
・賃金助成額の引上げ(960円→1,000円/時間 等)
特に、非正規雇用労働者の育成支援が強化される点が特徴的です。
【特定求職者雇用開発助成金の新設】
中高年者の安定雇用支援として、新たに「中高年者安定雇用支援コース」(仮称)が創設される予定です。
・対象:35歳~59歳の不安定就労者
・支給額:30~60万円
・要件:正社員としての継続雇用
4. 働き方改革関連の支援強化
【両立支援等助成金の拡充】
仕事と育児・介護の両立支援として、両立支援等助成金が大幅に拡充されます。
特に、女性活躍推進の観点から、女性特有の健康課題への対応支援が新設される点は注目です。
【テレワーク関連助成金】
テレワークの導入・定着支援として、以下の助成が継続される予定です。
人材確保等支援助成金(テレワークコース)
・制度導入助成:20万円
・目標達成助成:10万円(賃上げ要件達成で15万円)
5. まとめ
令和7年度の雇用関係助成金は、以下の4つの方向性が特徴的です。
ただし、繰り返しになりますが、ここでご紹介した内容は、現時点での概算要求に基づくものです。実際の制度開始までに内容が変更される可能性が十分にありますので、最新情報にはご注意ください。
また、各助成金の具体的な申請要件や申請手続きについては、制度確定後に改めて詳細が示されます。当事務所では、今後も最新の助成金情報を随時更新してまいりますので、具体的な活用についてのご相談は、お気軽にお問い合わせください。
※令和7年度予算概算要求の主要事項のうち助成金関係のページのみを抜粋したものです。
(ページの関係で、一部、助成金に関係ない項目も含まれています。)