皆さん、こんにちは。特定社会保険労務士の山根敦夫です。今回は、中小企業の経営者や人事担当者の皆様に向けて、令和6年度(2024年度)の業務改善助成金についてご案内いたします。
この助成金は、従業員の賃金引上げと生産性向上を同時に実現したい中小企業の皆様にとって、非常に有益な制度です。ぜひ最後までお読みいただき、ご活用をご検討ください。
もくじ
1. 業務改善助成金とは? – 制度の概要と目的
業務改善助成金は、中小企業・小規模事業者の皆様が、事業場内で最も低い賃金(事業場内最低賃金)を30円以上引き上げ、かつ生産性向上のための設備投資等を行った場合に、その設備投資等にかかった費用の一部を助成する制度です。
この制度の目的は、中小企業の皆様の賃金引上げの取り組みを支援するとともに、生産性向上を促進することにあります。結果として、従業員の待遇改善と企業の競争力強化の両立を図ることができます。
申請期限は令和6年12月27日、事業完了期限は令和7年1月31日となっていますので、ご興味のある方はお早めにご検討ください。
2. 申請対象となる中小企業とは? – 基本的な条件
この助成金を申請するには、以下の条件を満たす必要があります:
ここで注意していただきたいのは、「事業場内最低賃金」という概念です。これは、事業場で最も低い時間給を指します。ただし、雇入れ後3か月を経過した労働者の最低賃金を引き上げる必要があります。
また、申請は事業場ごとに行います。例えば、工場と事務所がある場合、それぞれ別々に申請することができます。
3. 助成金の支給額はいくら? – コース別の上限額と助成率
助成金の支給額は、引き上げる賃金額、対象となる労働者数、事業場の規模によって異なります。以下に主なコースをご紹介します:
- 30円コース:30円以上の引き上げ。上限30万円〜130万円。
- 45円コース:45円以上の引き上げ。上限45万円〜180万円。
- 60円コース:60円以上の引き上げ。上限60万円〜300万円。
- 90円コース:90円以上の引き上げ。上限90万円〜600万円。
助成率は、事業場内最低賃金によって3/4〜9/10となっています。例えば、事業場内最低賃金が900円未満の場合は9/10の助成率となります。
具体的な計算例を挙げますと、事業場内最低賃金が898円で、8人の労働者を988円まで引き上げる場合(90円コース)、設備投資額が600万円だとすると、助成上限額450万円と設備投資額の9/10である540万円を比較し、低い方の450万円が支給されることになります。
4. どんな設備投資が対象? – 助成対象経費の具体例
助成対象となる設備投資等には、以下のようなものがあります:
- 機器・設備の導入:POSレジシステム、リフト付き特殊車両など
- 経営コンサルティング:業務フロー見直しのコンサルティングなど
- その他:顧客管理情報のシステム化など
これらの投資が、実際に生産性向上に寄与するものであることが重要です。単なる老朽化した設備の入れ替えは対象外となりますので、ご注意ください。
5. 申請から受給までの流れ – 5つのステップ
申請から助成金受給までの流れは以下の通りです:
このプロセスを踏むことで、適切に助成金を受け取ることができます。
6. 申請時の注意点 – 見落としがちなポイント
申請の際は、以下の点にご注意ください:
- 交付決定前に導入した設備は助成対象外となります。
- 地域別最低賃金の引上げに対応する場合、その発効日の前日までに事業場内最低賃金を引き上げる必要があります。
- 引き上げ後の事業場内最低賃金額を就業規則等に定める必要があります。
- 令和6年度より、複数回に分けての事業場内最低賃金の引上げは認められなくなりました。
また、予算には限りがありますので、申請期間内であっても募集が終了する可能性があります。お早めの申請をおすすめします。
7. 特例事業者とは? – 拡充された支援内容
特定の条件を満たす事業者は「特例事業者」として、より手厚い支援を受けられます。特例事業者の条件は以下の通りです:
特に物価高騰等要件に該当する場合、通常は対象外となるパソコン等の機器や一部の自動車も助成対象となる可能性があります。
8. まとめ – 経営者・人事担当者の皆様へ
業務改善助成金は、従業員の賃金引上げと企業の生産性向上を同時に実現できる、大変有益な制度です。この機会に、自社の賃金体系や生産性について見直してみてはいかがでしょうか。
ただし、申請手続きや条件の確認には専門的な知識が必要となる場合もあります。不明な点がございましたら、お近くの社会保険労務士にご相談ください。私たちが全力でサポートいたします。
従業員の待遇改善と企業の成長の両立を目指す経営者・人事担当者の皆様、ぜひこの制度をご活用ください。