キャリアアップ助成金「社会保険適用時処遇改善コース」のご紹介

1. はじめに:新設された助成金コースとその目的

皆さん、こんにちは。特定社会保険労務士の山根敦夫です。

2023年10月、キャリアアップ助成金に新たなコースが設けられました。「社会保険適用時処遇改善コース」と呼ばれるこの制度は、中小企業の皆様にとって非常に興味深い内容となっています。

本コースは、いわゆる「年収の壁」問題に対処し、労働者の処遇改善を図ることを目的としています。具体的には、労働者を新たに社会保険に加入させると同時に、その収入を増加させる取り組みを行う事業主の皆様を支援するものです。

本日は、この新しい助成金コースについて、分かりやすくご説明いたします。

2. 「社会保険適用時処遇改善コース」とは?

本コースは、2023年10月1日から2026年3月31日までの間に、新たに社会保険の加入要件を満たし、実際に加入することとなった労働者を対象としています。

主な特徴は以下の通りです:

  1. 労働者1人当たり最大50万円の助成金が受けられます。
  2. 社会保険加入に伴う手取り収入の減少を防ぐための手当支給や、労働時間の延長による増収を支援します。
  3. 中小企業向けの助成額が設定されており、大企業よりも有利な条件となっています。

この制度を活用することで、従業員の福利厚生の向上と、企業の人材確保・定着に繋げることができます。

3. 助成金の種類と金額

本コースには、主に3つのメニューがあります。

  1. 手当等支給メニュー
    • 1年目:20万円(社会保険適用促進手当等として賃金の15%以上を追加支給)
    • 2年目:20万円(1年目と同様の条件)
    • 3年目:10万円(賃金の18%以上を増額)
  2. 労働時間延長メニュー
    • 一律30万円(週所定労働時間の延長と賃金増額の組み合わせによる)
  3. 併用メニュー
    • 1年目に手当等支給メニュー(20万円)、2年目に労働時間延長メニュー(30万円)の併用が可能

注意点として、これらの金額は中小企業の場合であり、大企業の場合は3/4の額となります。

また、社会保険適用促進手当については、本人負担分の保険料相当額を上限として社会保険料の算定対象外となる特例があります。これにより、従業員の手取り収入を減らすことなく社会保険に加入させることが可能となります。

4. 申請の流れと注意点

助成金の申請には、以下の流れがあります:

  1. キャリアアップ計画書の作成と提出
    • 取り組みを開始する日の前日までに、管轄の労働局に提出する必要があります。
    • 不備があると当日受理されない可能性があるため、余裕を持って準備しましょう。
  2. 取り組みの実施
    • 計画に基づいて、手当の支給や労働時間の延長などを実施します。
  3. 支給申請
    • 取り組み開始から一定期間ごとに申請を行います。
    • 例えば、手当等支給メニューの場合、6ヶ月ごとに申請し、1回あたり10万円が支給されます。

申請にあたっては、対象となる労働者が要件を満たしているか、しっかりと確認することが重要です。

5. 対象となる労働者の確認方法

対象となる労働者は、以下の条件を満たす必要があります:

  1. 2023年10月以降に新たに社会保険の被保険者要件を満たすこと
  2. 社会保険加入日の6ヶ月前の日以前から継続して雇用されていること
  3. 社会保険加入日から過去2年以内に同事業所で社会保険に加入していなかったこと

また、労働時間延長メニューを選択する場合は、社会保険加入日から2ヶ月以内に週所定労働時間を一定時間延長できることが条件となります。

これらの条件を満たしているか、慎重に確認しましょう。

6. まとめ:本助成金活用のメリットと相談窓口

「社会保険適用時処遇改善コース」は、中小企業の皆様にとって、以下のようなメリットがあります:

  1. 従業員の処遇改善による人材確保・定着
  2. 社会保険加入による従業員の福利厚生向上
  3. 「年収の壁」問題への対応
  4. 助成金による経済的支援

本制度の活用をご検討の際は、以下の窓口にご相談ください:

  • 都道府県労働局
  • 管轄のハローワーク
  • 各都道府県の働き方改革推進支援センター
  • 年収の壁突破・総合相談窓口(コールセンター):0120-030-045(平日8:30~18:15)

制度の詳細や申請方法について、専門家のアドバイスを受けることをお勧めします。従業員の方々のより良い労働環境づくりに、ぜひこの制度をご活用ください。